竣工50年 北海道百年記念塔展 井口健と「塔を下から組む」

会期:2020年10月3日(土)~11月29日(日)

休館日:月曜日

入館料:一般300円、高校生・市内高齢者150円、中学生以下無料

主 催 市立小樽文学館(〒047-0031 小樽市色内1-9-5 tel.fax.0134-32-2388)

後 援 小樽文學舎


「空白を耕す」

1970年に竣工した札幌市厚別区にある北海道百年記念塔は地域のランドマークである。地上高100メートルあり、遠くからも縦に伸びるその姿を見つけられる。名称どおりに北海道開道を記念して作られた塔であり、老朽化に伴って2019年に解体が決まった。これをきっかけに北海道内の開拓記念の碑や塔を手当たり次第に調べてみた。その数は調べた場所の数に比例して増える一方で、100や200ではおさまらなかった。密度には偏りがあるが、主に明治以降に入植した土地の数に比例して記念碑は建てられていた。

新型コロナウィルスの報道が繰り返されている日々に、現在住んでいる札幌を中心に開基碑、記念碑、開拓碑を訪ねた。多くは神社の境内や公民館、小中学校の敷地に配置されていた。幹線道路脇にある石碑も少なくなかった。設置された場所柄もあって、そこに入植してきた人々によって営まれてきた部落の神様である氏神のように見えた。

北海道百年記念塔は、塔がある野幌森林公園の景観も含めて設計されている。換言すると景色の一部となるようにその塔は設計されている。塔がもし解体されたとして、設計するうえで最も重要だったシンボルを失った景色は、これまで塔があったという歴史を伴ってどのように見えるのか。多くの記念碑も視野に入れることで、その問いを百年記念塔固有の問いに留めず、場所と概念とに内在する問いへと重心を傾けることができる。

モニュメントから切り離された場所、或いは場所から切り離されてできた空白を、風景という視点からどのように受け止めることができるのだろうか。碑と場所、それぞれを切り離してみる。そこにできた新しい空白を耕してみることは、目の前に見えている世界の確かさの前に立ち止まってみる契機となるはずである。

2020 佐藤 祐治