スマートフォンの画面に水がついた。それは日差しを浴びて虹色に輝いた。
液晶ディスプレイの色表現を担うカラーフィルタという基盤が虹の正体だった。 それは光の3原色であるRGBで作られたカラーフィルタの画素が、水のレンズで拡大されて虹色に見えていた。 カラーフィルタは写真の暗室工程と近似したフォトリソグラフィー(Photolithography)技術で作られていることを知った。
液晶の上の虹を撮影すると更にモアレの虹が表れた。 デジタル画像の配列同士の干渉による成果であり、整列した秩序の競合が矛盾の虹を生成した。 秩序の反復性が正確であればあるほど、虹は画像いっぱいに展開した。それは写真の持つ複写性にも通じるように思われた。
流れる水をすくいディスプレイに数滴落とすと、そこに表示している川が歪んで見えた。 ゆがみの端にはきれいな虹が見えていた。液晶の上の水が写真という媒体のひとつの視座を提示しているようだった。 要素が全体を規定する。それはまるで水の中に川を入れようとすることなのかもしれない。